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REPORT
相談員の現場レポート

 

2025/12/14

福島県立相馬農業高校を見学しました。

2025年11月6日に当センターのメンバー4名で、福島県立相馬農業高校の見学に伺いました。同校は毎年3月に私共が企画しているイベント「高校生から学ぶ ふくしまの今とこれから」に初回から参加してくださり、学習成果の発表や、地元企業との協働など様々な取り組みについて紹介していただいています。このためかねてから興味がありましたので、毎回生徒を引率している藤原先生に同校と農場の見学をお願いしたところ、ご快諾いただき、今回実現したものです。

最初に同校の「雲雀が原(ひばりがはら)農場」に伺いました。授業が終わった3時過ぎ、あちらこちらから作業服に長靴姿の生徒たちが出てきて、私たちに気さくに挨拶してくださいました。中でも牛舎から出てきた数名が、挨拶の後、仲間と楽しそうに談笑している姿が同校の雰囲気を表していて印象的に感じられました。

  ☆ICT温室

まず案内していただいた温室で、カーネーション、サイネリア、シクラメンなどの花を観賞した後、イベントの学習発表でも紹介された「ICT温室」を訪れました。温度、湿度、換気、遮光、水、肥料の濃度などが適切に保たれた太陽光利用型の温室で、厳密に管理されているため中には入れず周囲から覗き見る形でしたが、ずらりと並んだトマトの成長した苗の様子はさながら植物工場(水耕栽培)でした。時期が来ると葉の周辺の二酸化炭素濃度が0.5%になるようプログラムされていることには驚かされました。

 ☆パッシブ水耕

また、「パッシブ水耕」の温室も見せていただきました。パッシブ水耕とは培地として多孔質ポリペットに入れた産業廃棄物のキルン灰を利用し、栽培中に液面が低下することによって根(湿気中根)が空気中に露出するために、その根から酸素を吸収することができ、培養液を循環させる必要がないという、画期的な栽培方法です。低コスト、省力化、ポンプを動かすための化石エネルギーが不要、病気が少ない、など多くのメリットがあるようです。

     ☆ポリエステル媒地

産業廃棄物といえば、この農場では「ポリエステル媒地」の活用にも取り組んでいます。不要になったポリエステルの衣服から作ったこの媒地は病原菌がつかないため腐らないので入れ替える必要がなく、半永久的に使えるなどの特徴があり、豊洲市場の屋根の緑化や関西万博会場の大屋根リングのわきの芝生でも利用されているそうで、2027年に横浜市で  開催される「国際園芸博覧会」でも活用されるそうです。そういえば、震災後に川俣町の新たな名産として人気の「かわまたアンスリウム」もポリエステル媒地を利用して栽培されています。

当日は更に畑を案内していただきました。いろいろな野菜が栽培されている中で印象に残っているのは何種類かの大豆で、地域に適した品種の中から、少雨、降雨にも耐えて歩留まりが上がるように福島県農業試験場と協力しながら品種改良をしているということでした。気候変動の中でも収穫が上がるよう、このような努力が行われていることに敬意を表したいと思います。その他、郷土料理「ベンケイ」に欠かせない「芋がら」になるえび芋の茎を見せていただきました。

        ☆畑の風景
      ☆大豆の品種改良の様子
   ☆食品科学科の生徒が育てている大豆

 

 

 

 

 

別の畑では大豆の畝が並んでいて畝ごとに名札が立っていました。食品科学科の生徒が一人ずつ畝を持っていて、収穫した大豆は企業と提携して特色のある産品を産み出しているとのことでした。

続いて、牛舎も見学させていただきました。飼育しているほとんどが牝牛で、繁殖に取り組んでいるとのこと。牛との距離は近く、目の前に牛の大きな顔が来たときは思わず会話しそうになりました。通常えさにする干し草は農場で栽培しているそうです。また、牛のたい肥は畑で使用して循環農業を行っているとのことでした。

 ☆GAPへの取組

その後、日が暮れてあたりが暗くなってきたので、農場を出て、2キロほど離れた校舎に移動しました。校長室に向かう途中の掲示板にはGAP(農業生産工程管理)に取り組む様子のほか、「世界最大の大豆アート」で2014年にギネス記録に認定された記事と認定証などが掲示され、そこに「地域に元気を発信!」という言葉が添えられていました。お迎えくださった校長先生は、「高校生から学ぶ ふくしまの今とこれから」について、生徒が発言できる貴重な機会であると評価してくださり、ありがたくお話を伺いました。

 

   ☆「相馬野馬追」の書かれた黒板

その際、校長先生から食品加工設備の見学を勧めていただいたため、立ち寄ると食肉加工、パンを製造するための機械、器具のほか、フリーズドライができる大きな機械も設置されていました。翌日に「相農ショップ」(生徒が手掛けた生産物や加工品の販売会)を控えていたこともあり、遅い時間ではありましたが、パンを焼く良い香りが漂っていました。販売会場にはAirレジ(タブレット型POSレジ)も導入され、準備万端。毎回地域の方々が大勢買いに来られて賑わうそうです。会場の黒板には地域の伝統行事の「相馬野馬追(そうまのまおい)」のイラストが描かれていました。

     ☆馬場を歩く馬の様子

すっかり日は暮れてかなり暗くなっていましたが、藤原先生は最後に馬場を案内してくださいました。馬場にはまだ数人の生徒がいましたが、人を乗せてゆっくり馬場を歩く馬の姿に相馬の歴史を感じました。

当日は、伝統を守りながら常に進歩を目指す学校と生徒たちの思いが伝わってくる一日でした。農業を通じて“ふくしまの復興”を考える良い機会となりました。

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