【今月のテーマ】:第3回視察会に参加して(2025年11月7日)
―JAEA ANALYSiS LAB.(アナリシスラボ)、中間貯蔵施設と大野駅周辺地域―

2025年11月7日にふくしまの食相談センターの第3回視察会に参加しました。当日は好天に恵まれ、紅葉が始まり、秋真っ盛りでした。
最初に、常磐線JR大野駅前に2025年3月にオープンした 「CREVAおおくま」の1階にあるJAEA(日本原子力研究開発機構)福島廃炉安全工学研究所のANALYSiS LAB.(アナリシスラボ)を訪問しました。JAEAでは、東京電力によるALPS処理水の海洋放出に伴って、第三者の立場からALPS処理水に含まれる放射性物質の客観性及び透明性の高い測定を目的として、東京電力とは独立した分析を行っています。
また、福島第一原子力発電所の廃炉に伴って、燃料デブリの取り出しに向けた研究開発にも取り組んでいます。燃料デブリとは、原子炉内の燃料が過熱して周囲の構造物と溶け、その後冷やされて固まったものですが、その本格的取出しに向けた準備として、燃料デブリの性状や炉内状況の推定等の研究開発を進めており、分析手法等を福島から世界に発信していくという壮大な計画にも取り組んでいます。

今回訪れたANALYSiS LAB.は「分析」をテーマにしたJAEAの情報発信スペースです。分析の魅力を利用者と展示物で双方向にやり取りして楽しみながら学習するコーナーや、一般には立ち入ることができない研究施設を大型ビジョンで見学できるバーチャルツアーなどが体験できます。また、スケルトン・ラボではガラスの奥に実際の分析室があり、分析現場で使用している装置の見学ができます。更に、ホウシャセン・スコープのコーナーでは霧箱が設置されており、放射線の飛跡を見ることができました。
午後からは中間貯蔵事業情報センターの館内ガイドツアーを経て、実際の中間貯蔵施設(大熊町コース)をバスに乗って見学しましたが、今年は全国的に熊が出没しているため、降車しての見学はできずに残念でした。

中間貯蔵施設は、福島県内の除染で発生した土壌や廃棄物を最終処分するまでの間、安全かつ集中的に貯蔵するための施設です。中間貯蔵した土壌や廃棄物は2045年3月までに県外処分することが法律で定められています。
施設は大熊町と双葉町にかけて整備されており、約1,600ha(渋谷区とほぼ同じ面積)に及ぶそうです。敷地内には特別養護老人ホームだった建物が震災の日のままの姿で取り残されています。また、海抜5メートルに建てられた福島県水産種苗研究所では津波が北上して屋根を超えて襲ったため7名の職員が亡くなられたということでした。地震の発生から14年経ってもこの場所は震災当時のまま被害の悲惨さを物語っていました。

福島県外最終処分に向けての課題は、最終処分量を低減することにあり、中間貯蔵施設内では除去土壌の再生利用に向けた道路盛土実証事業が進められています。福島県外での最終処分を実現するには、再生利用や最終処分に対する全国民的な理解が必要不可欠となります。
私たちは、東京電力管内に住んでおり、東京電力から電気が供給され、何不自由のない生活を送っています。でもそれは電力供給地である福島県の原子力発電所で発電して関東地方に送電されていたことを考えると、再生利用や最終処分について無関心は許されません。再生利用や受入れについて活発に議論をして相互理解を深めるべきと思いました。
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【編集後記】
今年度の現地視察会は今回で終わりました。来年2月6日(金)、26日(木)には、福島第一原子力発電所のオンライン視察会を行います。ご自宅から気軽に参加できますので、みなさまのご参加をお待ちしております。なお、参加方法については、改めてご案内します。

