臨時号のテーマ
1.交流会「高校生から学ぶ ふくしまの今とこれから」開催ご報告
(2023年3月17日(金)13:00~16:30)
2.「ふくしまの食相談センター」相談窓口のご案内
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1.「高校生から学ぶ ふくしまの今とこれから」
東日本大震災から12年経ち、福島県では現在、復興に向けた種々の取り組みが行われています。ふくしまの食相談センターでは、福島県内の3校の高校生を招き、それぞれの学校の、地域に根を張った活動を紹介し、交流するための集いを企画・開催しました。プログラムは、第1部:講義及び高校生の成果発表、第2部:高校生と対話しよう、第3部:ブース見学と交流、の3部構成としました。ここでは、高校生の成果発表と、聴講者の皆さんとの対話についてお伝えします。
開催日:2023年3月17日(金)13:00-16:30
開催場所:きゅりあん(品川区総合区民会館)7Fイベントホール
第1部 講義及び高校生の成果発表
(1)福島県立相馬農業高等学校「地域とともにあゆむ農業高校として」
福島県立相馬農業高等学校は浜通り北部の南相馬市にある創立120年の農業高等学校である。「地域に元気を発信しよう」を合言葉とし、多くの活動にチャレンジしている。
①ギネス記録に挑戦:「巨大シードアート」、「巨大折り紙アート」の2つのギネス記録を持っている。
②菜の花プロジェクト(津波地区での地域再生)、はまなすプロジェクト(希少植物の増殖と地域活性化プロジェクト)、命を守る緑の防潮堤(約900本の苗を植樹)
③JR常磐線全線開通を記念して新たな地域特産品を開発(いちごパンなど)
現在、先進技術を実体験し経営改善の視点を持つためのイノベ学習を行っている。例えば、IT技術と農業を掛け合わせた省力化や高品質化を目指していく「スマート農業」を進めている。また、衣料廃棄物のポリエステル繊維培地を使った野菜栽培、タブレットで野菜や果物を撮影すると直ちに甘味・旨味を数値化する美味しさの見える化アプリの導入などに取り組んでいる。
(2)福島県立磐城桜が丘高等学校
福島県立磐城桜が丘高等学校は、浜通り南部のいわき市にある創立118年の伝統校である。
①いわき探求ゼミ「いわき(福島)発のブランドを立ち上げ流通させるには」
福島県産農水産物は原発事故後12年、安全が確保出来ても販路は復活できていない。ALPS処理水の海洋放出による海産物への影響を懸念し、解決策を検討している。
いわき沖には親潮と黒潮がぶつかる潮目あり、美味しい「常磐もの」と呼ばれる魚が獲れる。そこで、スタジアムグルメのお店として、「MARIN KITCHEN」という飲食店ブランドを、Jビレッジ、FCパーク、㈱マルベリイとのコラボで立上げ、「常磐もの」の美味しさを知ってもらい、その普及に努める。
②家庭クラブ「さくら色の架け橋~ふくしまの食を応援したい~」
原発事故による風評被害を払拭したい、福島の食品を他県の人に食べてもらいたいとの思いから、地元スーパーマルトとコラボレシピを開発。250超のアイデアの中から福島県産の食材を用い、食事にもスイーツにもなるベーグル・サンドウィッチを企画・販売。ブランド名「桜子ちゃんのベーグルサンド」と名づけ、大きな反響を得た。また、ふくしま復興「楢葉町・マルトさつまいもプロジェクト」では、「お芋のタルト」、「さつまいものクリームブリュレ」などを開発した。
(3)福島県立安積高等学校「処理水の海洋放出 =教育・メディアの責任=」
福島県立安積高等学校は、中通りの郡山市にある139年の伝統を持つ高校である。ALPS処理水の海洋放出においては、トリチウム以外の核種は規制基準未満まで浄化処理し、トリチウムは国の規制基準値60,000Bq/Lの1/40、WHOガイドライン10,000Bq/Lの約1/7の1,500Bq/L未満まで海水で希釈し、規制基準を満たす水が放出される。この情報が全国に認知されていないことの、教育とメディアの責任について考察している。
①教育の責任:国が処理水の安全性を説明するチラシを全国の小中高校に配ったが、東北沿岸の自治体ではチラシの配布差し止めや回収などの動きが起きた。正しい知識と科学的思考力を養うのが教育の責任である。
②メディアの責任と一般人の情報への接し方:12年間で放射線による健康被害は起きていないにも拘らず、メディアはそれを取り上げていない。被災者や漁業関係者に焦点をあてた報道は多いが、科学的な情報は少ない。結果、選択された報道、正しい知識の少なさから不安が生じる。一方、私たちは情報を受け身で得るだけでなく、自ら発信者に情報を取りに行く、実際に現場に行く、話を聞く、発信者のWEBサイトを見に行くことが必要である。
第2部 高校生と対話しよう
第1部の発表を受け、参加者からの質問や意見、助言などを出して貰い、高校生が自らの声で質問に答える質疑応答を実施しました。一部ですが紹介します。
(1)福島県立相馬農業高校への質疑
質問:今、日本は食料の自給率が減少し、ウクライナの問題もあり小麦やトウモロコシの価格が上がっています。食料自給率を上げるにはどのようにしたらよいと考えていますか?
回答:食料自給率の問題は日本の皆が考えていかなければ解決しない。みんなが関係ないと思わずに、国民が意識して国産を積極的に買うようにすれば生産が増えると思う。
(2)福島県立磐城桜が丘高校への質疑
質問:福島の食材が震災後に販路がなくなり、安全性が確保されても復活しない由、東京の消費者に常磐ものの魚やいちごが手に入るようにするにはどうしたらよいと考えていますか?
回答:めひかりは福島のいわきでしか聞かない魚だと思う。そういうあまり東京でみかけないものをブランド化すればいいと思う。
(3)福島県立安積高校への質疑
質問:放射線の情報については、国や東電のHPを自ら見に行く必要があるという話でしたが、こんな情報があれば良いのにというものがあれば教えてください。
回答:「WHOの基準と日本の基準を比べてWHOより厳しいから安全」という言い方が多いが、他との比較だけでなくこの基準値がどういう根拠で出来たかを教えるとより理解が進むと思う。
「東京の消費者に望むことがあれば教えてください」との質問に対して
福島県のポスターに「来て」「食べて」「飲んで」とある。更に、「買って」「食べて」「知って」ほしい。また、東京では販路拡大イベントや、街頭販売などが行われてる。その様な草の根イベントへ参加して、SNSにツイートして貰うなどすれば、県産品の振興につながると思う、との回答がありました。
講演者からのひとこと
【安藤宏氏(環境再生プラザ アドバイザー)】
震災と原発事故から12年経つが、風評被害は根強く残っている。その中で高校生が頑張っている姿を見て感銘を受けた。皆さんの放射線に関する高い知識で、「本当はこうなんだよ」、「正しい知識はこうだよ」と伝えていけば日本全体の風評がなくなっていくと思う。
【脇坂斉弘氏(合同会社ねっか 代表社員)】第52回日本農業賞特別賞受賞
高校生の皆さんは、将来、福島から東京に住むことになるかもしれないが、福島との関わりを続けて欲しい。福島県は伝え方がへたな県だが、美味しいものを付加価値をつけて売り、消費者の皆さんは、是非きちんとした価格で福島のものを食べて応援してほしい。
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◇聴講者アンケート結果
・交流会は「大変良い」 83%、「まあまあ良い」13%、合計96%の高評価でした。
・「このようなイベントにまた参加したいですか?」の設問には、記入された全員が「参加したい」 と答え、「どのイベントが良かったですか?」では「講義及び発表」「高校生と対話しよう」が高評価でした。
・その他、「高校生が自分たちの意見を持ち、活動していることが伝わってきた」、「生徒たちのパワーに感動した」、「大変頼もしく、明るい未来を感じた」等がありました。
◇交流会終了後、高校生から届いた感想
・来場者の方々から質問をいただくことができ、とても嬉しかったです。自分たちの思いが、実際に伝わったように感じました。第3部では、来場者の方と白熱した議論をすることができ、「福島県外の方が、どのように問題を捉えているのか」を知り、学びを深められました。
・今後も、このような福島県と東京の人を繋ぐような活動を継続してほしいです。このような地道な活動が、福島県産のイメージの良い変化につながるはずです。本当にありがとうございました。
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2.「ふくしまの食相談センター」相談窓口のご案内
「ふくしまの食相談センター」では、ALPS処理水の海洋放出を控え、福島県産の食品の安全性に加え、宮城県や茨城県など近隣県産の海産物等の安全性についても、小売店や飲食店等の方々からのご質問やご相談をお受けすることになりました。
みなさまからのご相談をお待ちしております。
【編集後記】
「ふくしまの食相談センター」では今年度も、勉強会、視察会、交流会などを企画しますので、是非ご参加ください。メルマガは2か月に1回配信予定です。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。